先人たちの知恵を受け継ぐ天然の接着剤
■米のり
米のりとは、ご飯が原料です。
初期強度は構造用集成材などの化学接着剤の方が若干強いのですが、その接着力はものすごく、木工用ボンドとほぼ同じ強度です。
この接着の寿命はなんと200~300年は持つと言われており、室町時代から仏像はこういった寄せ木を米のりでくっつけてから彫刻しており、今でも実在しております。ちなみに、防カビ効果として酢酸を混合しています。
-豆知識-
日本では、にかわは仏教が伝来して以来、動物の肉食を忌み嫌った習慣があったため、使用しなかった時期もありましたが、日本書紀に記されたところによると推古18年に墨を作るために使われたようです。
その後は木や竹を貼り合せる糊として使用されたり、画材としても使われてきました。原料となる動物(牛・鹿・兎・魚)によって、接着力がちがいますし、使用用途も異なります。
ぎんなん草は海藻の一種です。
これを煮てできた液が「ふのり」。ふのりは、接着力が弱く水に大変溶けやすいのが特徴です。この特徽を利用したものが障子ののりです。
水に濡れるとたちまち溶けて容易に剥がせるのです。
ちなみに、和室の壁は、ぎんなん草という海草を煮詰めドロドロにしたものと、ふるいにかけて天日干しにした山土と、アサギ粘土を混ぜたもので、雰囲気のある緑がかった土色をしています。
ぎんなん草を煮詰めた液が、ふのりなのです。
-豆知識-
確かな記述はありませんが、ぎんなん草(海草の一種は、アイヌの人たちが昔から食用としていたようです。北海道の留萌では仏の耳とも呼ばれ味噌汁の具として、一般にも出回っているようです。
接着剤の質問集
Q:接着剤はどんな部分に使用しますか?
A:集成材・ムク材には米のり。フローリングや洗面台などにはニカワ、そしてふすま・障子を張るときにはでんぷんノリを使用しております。
Q:米ノリって普通のお米ですか?
A:私達が普段食べているお米です。米ノリを簡単に言うとお粥です。ミキサーで粉状にしたお米を粘りが出るまで水を混ぜながらゆっくりと煮込みます。 これを木にたっぷりと塗って接着剤として使います。
Q:米ノリってすぐ剥がれてしまうように思うんですけど大丈夫なんですか?
A:水が直接かかったりすると、剥がれやすくなります。しかし、なにもなければ300年はもつといわれております。(例)大仏や観音像等
Q:米のりで接着した部分はカビが生えたりしませんか?
A:米のりの中に酢酸を配合することによって、防カビ対策をしています。
Q:米ノリとにかわはどういう使い分け方をしているんですか?
A:米ノリは乾燥・硬化に大変時間が掛かる為、主に工場で集成材や建具の組立や加工に使います。
にかわは、天然の瞬間接着剤とも呼ばれるぐらいに早く接着出来るので、現場で加工や組立をする際に使います。
Q:にかわの接着ってどれくらいもつんですか?
A:米ノリと違って接着時に高分子化しないので、50年ほどが限界です。ですので、床等の垂直方向に力が掛かる所にだけ使用します。
Q:にかわって他にどんなところに使ってるんですか?
A:にかわは動物性のゼラチン(脂質)なので、硬化すると水を弾きます。その性質を利用して洗面台の裏側などに防水材として使います。